栗林慧 虫の目図鑑

ジャコウアゲハ 独特な姿のさなぎ

2016年01月19日 12:35

さなぎ つる性(せい)食草のウマノスズクサがからみついていたかたわらで見つけたさなぎ。このまま冬を越(こ)し、4月になってから羽化(うか)して成虫になる
さなぎ つる性(せい)食草のウマノスズクサがからみついていたかたわらで見つけたさなぎ。このまま冬を越(こ)し、4月になってから羽化(うか)して成虫になる
 このチョウの姿(すがた)をふつうに見たときには、オスの体の色は薄(うす)い黒色、メスは茶色がかった色で、アゲハチョウの仲間のうちでは一番地味な存在(そんざい)といえるでしょう。

 でも、全身をよく見てみると、胴体(どうたい)に赤い模様(もよう)と後ろ羽にも赤みがかった模様が付いています。名前のジャコウというのは、オスが腹端(ふくたん)(腹(はら)の後ろの端(はし))からジャコウのにおいを出すので付けられた名前だそうです。暖(あたた)かい沖縄(おきなわ)地方では、ちょうどいまごろの季節に咲(さ)き誇(ほこ)っているカンヒザクラの花に来て、盛(さか)んに蜜(みつ)を吸(す)っている姿を見ることができます。

幼虫 ウマノスズクサにいる幼虫。食べては休み食べては休みを繰(く)り返し、その間に5回脱皮(だっぴ)してさなぎになる
幼虫 ウマノスズクサにいる幼虫。食べては休み食べては休みを繰(く)り返し、その間に5回脱皮(だっぴ)してさなぎになる
 長崎(ながさき)県平戸(ひらど)市の私(わたし)の家の周りでは、春ツツジの花が咲き始めるころに初めて姿を現(あらわ)し、野原に咲いているアザミの花によく来て蜜を吸っている姿を見かけます。花に来る以外は、林の周りの地上近くをヒラヒラと飛んでいるところを見かけることが多く、多分メスが卵(たまご)を産むための食草であるウマノスズクサを探(さが)しているところだと思っていました。

 ところが、ときどき暗い林の中の方まで行ってしまうところを見ると何か別の理由があるようにも思えます。その目的を知るために、いつか1匹(ぴき)の姿をずっと追い続けてみたいと考えているところです。

交尾 左下のさなぎから羽化したばかりのメスのところに飛んできて交尾(こうび)を始めたオス。上がメス
交尾 左下のさなぎから羽化したばかりのメスのところに飛んできて交尾(こうび)を始めたオス。上がメス
 幼虫(ようちゅう)もそうですが、特にさなぎは独特(どくとく)な姿をしていて、別名オキクムシとも呼(よ)ばれています。その体を枝(えだ)などに細い糸でくくりつけている様子が、怪談(かいだん)の番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)の中に出てくるお菊(きく)という女性(じょせい)を思わせることから付けられた名前だといわれています。


=2016/01/19付 西日本新聞朝刊=

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