栗林慧 虫の目図鑑

ヨナグニサン 世界一大きなガ、短い寿命

2015年11月17日 14:15

羽化(うか)して間もないメスの成虫。羽の先端の模様(もよう)がヘビの頭ににているので、敵(てき)の鳥から身を守ることができるともいわれている
羽化(うか)して間もないメスの成虫。羽の先端の模様(もよう)がヘビの頭ににているので、敵(てき)の鳥から身を守ることができるともいわれている
 ヨナグニサンは、漢字で与那国蚕と書き、実体はガです。その名の通り、日本最西端(さいなんたん)の沖縄(おきなわ)県与那国島(よなぐにじま)にすんでいます。近くの西表島(いりおもてじま)や石垣島(いしがきじま)にもいるといわれていますが、実際(じっさい)にこの写真を撮影(さつえい)したのは与那国島でした。

体長が6センチほどに成長した幼虫。体中が白い粉でまぶされたようになっていて、少し離(はな)れて見ると生き物のようには見えない
体長が6センチほどに成長した幼虫。体中が白い粉でまぶされたようになっていて、少し離(はな)れて見ると生き物のようには見えない
 ヨナグニサンは、世界で1番大きな昆虫(こんちゅう)として知られており、羽の長さは30センチになるものもいます。この世界一大きなガを撮影したいとずっと夢見(ゆめみ)て、それが実現(じつげん)したのは1974年。沖縄がアメリカから返還(へんかん)された年の2年後のことでした。その年の夏、念願の現地入りを果たした私(わたし)は、地元の人からの情報(じょうほう)を頼(たよ)りに山の中をあちこち探(さが)しまわったものの、幼虫(ようちゅう)も含(ふく)めてそれらしい姿(すがた)を全く見つけられませんでした。

食べていた木の葉をそのまま使って作られた枯(か)れ葉そっくりの繭。幼虫はこの中でサナギになり、時期がくると羽化して成虫になる
食べていた木の葉をそのまま使って作られた枯(か)れ葉そっくりの繭。幼虫はこの中でサナギになり、時期がくると羽化して成虫になる
 夕方近くになって、その日の探索(たんさく)をあきらめ河原(かわら)の片隅(かたすみ)でふと前方に目をやったところ、なんとすぐ目の前の木の枝(えだ)にヨナグニサンの繭(まゆ)がぶら下がっているのを見つけたのです。もともと数も少ないし、出かけて行ってもなかなか見つけることは難(むずか)しいといわれていたのです。本当に奇跡的(きせきてき)ともいえる出合いの瞬間(しゅんかん)は、あれから40年たった今でも、まるで昨日の出来事のようによく覚えています。

 この大きなガは、幼虫時代はいろいろな植物の葉を食べています。しかし、成虫になると口が無くなってしまうため、寿命(じゅみょう)はオスが4~5日、メスが5~9日といわれています。世界最大の昆虫といわれながら、寿命がそんなに短いとは不思議です。でも、長生きをしてボロボロになった姿をさらすよりも、ましな気がするのも確(たし)かです。


=2015/11/17付 西日本新聞朝刊=

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