栗林慧 虫の目図鑑

ジガバチ 獲物を狩り、幼虫の餌に

2015年10月20日 14:22

ガの幼虫を捕らえた後、尻(しり)の先から出た針をつき刺し、麻酔注射をしているところ。刺すのは1度だけでなく、幼虫がさらに動くようなら何度も注射する
ガの幼虫を捕らえた後、尻(しり)の先から出た針をつき刺し、麻酔注射をしているところ。刺すのは1度だけでなく、幼虫がさらに動くようなら何度も注射する
 ハチの種類の中に、通称(つうしょう)「狩(か)りバチ」と呼(よ)ばれるグループがいます。その名の通り、それらのハチは獲物(えもの)の狩りをして、その獲物を幼虫(ようちゅう)の餌(えさ)にしているハチたちです。

 このハチたちは、ミツバチやスズメバチのように大きな巣を作って大家族で生活することはなく、いつも1匹(ぴき)だけで生活しています。今回のジガバチもその狩りバチの一種で、その姿(すがた)を見ることができるのは、だいたいいつも地上をせかせかと忙(いそが)しく歩きまわっているところです。捕(と)らえる獲物はいつもアオムシ(ガの幼虫)で、草やぶのようなところを飛んだり歩き回ったりして見つけると、飛びかかって針(はり)を刺(さ)し、麻酔注射(ますいちゅうしゃ)をして幼虫が動けないようにしてから運びます。

地下約3センチの深さにある育児室。獲物のアオムシと、その上に産みつけられた卵
地下約3センチの深さにある育児室。獲物のアオムシと、その上に産みつけられた卵
 狩りをする前に、あらかじめ探(さが)しておいた場所まで獲物を運ぶと、そこの地面に穴(あな)を掘(ほ)ります。掘り終わると獲物を引きずり込(こ)み、獲物の胴体(どうたい)の上に卵(たまご)を1個(こ)産みつけます。その後、穴の外に出てきて、まわりに転がっている石粒(いしつぶ)などを使って入り口をすっかり閉(と)じてしまいます。そこに、「仕事」の跡(あと)が全く分からないようにしてしまいます。

獲物探しや穴堀り作業の合間、自分自身の栄養補給(ほきゅう)のために野ギクの花にやってきて蜜(みつ)を吸(す)っている
獲物探しや穴堀り作業の合間、自分自身の栄養補給(ほきゅう)のために野ギクの花にやってきて蜜(みつ)を吸(す)っている
 そして、また次の仕事に向かってどこかへ飛び去って行きます。何日かして卵から生まれ出た幼虫は、すぐさま親バチが用意しておいてくれた獲物を食べはじめます。その獲物は死んだものではなく、麻酔をかけられて動けなくなっているだけなので、幼虫は新鮮(しんせん)なままの食料を食べて育つことができるのです。


=2015/10/20付 西日本新聞朝刊=

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