栗林慧 虫の目図鑑

昆虫が飛ぶ瞬間 自動的に撮影する方法を考えた

2015年07月21日 11:08

ヒゲコメツキ 葉の上から飛び立った瞬間。複雑(ふくざつ)な形の触角(しょっかく)をピンとのばし、脚(あし)をいっぱいにのばしている。この脚をいっぱいに開いたスタイルが飛び終わるまで変わらないことが、撮影した写真によって初めて確認(かくにん)された
ヒゲコメツキ 葉の上から飛び立った瞬間。複雑(ふくざつ)な形の触角(しょっかく)をピンとのばし、脚(あし)をいっぱいにのばしている。この脚をいっぱいに開いたスタイルが飛び終わるまで変わらないことが、撮影した写真によって初めて確認(かくにん)された
 昆虫(こんちゅう)は大部分の種類が飛ぶことができます。しかし、そんな昆虫も同じように飛ぶのではなく、種類によって飛び方が異(こと)なり、飛ぶ理由もいろいろあるようです。それで、今回からは何回かに分けて昆虫の飛行についてのお話をしたいと思います。

 ここで見ていただく写真は、実際(じっさい)に昆虫たちが空中を自在に飛び回っている瞬間(しゅんかん)を撮影(さつえい)したものです。どうしてこんな写真が撮(と)れるのかというと、今からおよそ40年前、昆虫の生態をいろいろ撮りながら、どうしても撮ることができない飛んでいる瞬間を、なんとか自動的に撮影する方法はないものかと考えていました。

アオクサカメムシ ツユクサの花をかすめて飛んでくるところ
アオクサカメムシ ツユクサの花をかすめて飛んでくるところ
 その時、ある会社の車庫から車が出てくる際(さい)、出口を通る人々にそれを知らせるためにブザーが鳴る仕組みに気づきました。それは、車の通行をキャッチする電子装置(そうち)「光電スイッチ」というものであることを知りました。つまり、片方(かたほう)の壁(かべ)のレンズから出ている光が、もう片方の壁のレンズまで届(とど)いている間は何事も起こりません。しかし、車が来てその光をさえぎると、その瞬間にスイッチが入ってブザーが鳴るというものでした。

ショウリョウバッタ 大きな後ろ脚(あし)を使ってジャンプすると同時に羽ばたいて飛んでいく
ショウリョウバッタ 大きな後ろ脚(あし)を使ってジャンプすると同時に羽ばたいて飛んでいく
 この装置を見た瞬間、これを活用したら飛んでいる昆虫を撮れるのではないか、そう思ったのが始まりです。それ以来、約1年間実験に実験を重ねてついに撮影に成功しました。春先に庭の梅の花に飛んできたミツバチがカメラの前に来たその瞬間、シャッター音とともにストロボが光りました。見事に写ったその写真を見たときの興奮(こうふん)は今でもはっきりと覚えています。

 ◇世界的な昆虫(こんちゅう)写真家、栗林慧(くりばやしさとし)さん(長崎(ながさき)県平戸(ひらど)市)が撮影(さつえい)総監督(そうかんとく)を務(つと)めた世界初の昆虫3D映画(えいが)「アリのままでいたい」(東映(とうえい))が全国で公開されています。


=2015/07/21付 西日本新聞朝刊=

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