栗林慧 虫の目図鑑

ミイデラゴミムシ 高温の毒ガスで敵を撃退

2015年06月16日 14:14

石の上で休んでいるとき、口元を指でおさえたところ、その指を目がけて毒ガスを噴射した瞬間(しゅんかん)。ガスを出す部分のノズルは四方八方あらゆる方向に向けることができる。4回ほど続けて噴射すると、腹(はら)の中のタンクが空になり、しばらく出すことができなくなる
石の上で休んでいるとき、口元を指でおさえたところ、その指を目がけて毒ガスを噴射した瞬間(しゅんかん)。ガスを出す部分のノズルは四方八方あらゆる方向に向けることができる。4回ほど続けて噴射すると、腹(はら)の中のタンクが空になり、しばらく出すことができなくなる
地上にある朽(く)ち木の穴(あな)から出てきたところ。夜行性(やこうせい)で、ほかの虫や動物の死がいをさがして回る
地上にある朽(く)ち木の穴(あな)から出てきたところ。夜行性(やこうせい)で、ほかの虫や動物の死がいをさがして回る
 からだが小さいがゆえに、弱い立場の昆虫(こんちゅう)は、わが身を守るためにいろいろな作戦を講(こう)じています。

 自分の姿(すがた)を、すんでいる周りの物や色に似(に)せて目立たなくしたり、必要なとき以外は動かないでじっと隠(かく)れていたりするのがふつうです。しかし、いざとなったら、かみついたり、ハチのように毒針(どくばり)を使って積極的に攻撃(こうげき)したりしてくるものもいます。

 昆虫の武器(ぶき)といえば、いちばん知られているのがハチなどの毒針ですが、なかにはとんでもない武器を用いて敵(てき)を攻撃する昆虫がいます。ここに登場したミイデラゴミムシがまさにそうです。その武器は高温の毒ガスです。昼間は石の下などで休んでいて、夜になると活動を始めて、おもに動物の死がいなどをえさにしていますが、敵に捕(つか)まると、尻(しり)の先から突然(とつぜん)100度以上にもなる毒ガスを吹(ふ)き付けて敵を撃退(げきたい)します。

 この毒ガスのもとになっているのは、体内に蓄(たくわ)えられているハイドロキノンと過酸化水素(かさんかすいそ)で、噴射(ふんしゃ)直前にこの化学物質(ぶっしつ)が混(ま)じり合って反応(はんのう)し、「ブーッ」という爆発音(ばくはつおん)とともに勢(いきお)いよく噴射されます。

 このガスの噴射システムは、その後何万年もたってから、やっと人間が造(つく)り上げたロケットの発射方法と同じだというのです。こんなすごい武器をずっと昔からからだに備(そな)えている昆虫がいたとは、あらためて自然の不思議さを感じずにはいられません。

 アメリカの航空宇宙局(うちゅうきょく)(NASA)のロケット博士が、こんな昆虫がいることを早くから知っていたら、もっと早くに宇宙にロケットを飛ばすことができたにちがいないと言っているとのことです。

 ◇世界的な昆虫写真家、栗林慧(くりばやしさとし)さん(長崎(ながさき)県平戸(ひらど)市)が撮影(さつえい)監督(かんとく)を務(つと)めた世界初の昆虫3D映画(えいが)「アリのままでいたい」(東映(とうえい))が7月11日、全国で公開されます。


=2015/06/16付 西日本新聞朝刊=

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