栗林慧 虫の目図鑑

ヒメクロオトシブミ 器用に葉を巻き、卵を産みつける

2015年04月21日 10:49

葉の両側から切り進み中心の葉脈だけを残し、たれ下がった葉が適度(てきど)にしおれると先端から巻き上げていく
葉の両側から切り進み中心の葉脈だけを残し、たれ下がった葉が適度(てきど)にしおれると先端から巻き上げていく
 緑の芽吹(めぶ)きがはじまり、花々が咲(さ)き始めて、今年もまた昆虫(こんちゅう)たちが活動する季節がやってきました。落葉した雑木林(ぞうきばやし)の木々が芽吹き始めると、早速姿(すがた)を現すのがオトシブミ類です。この頃(ころ)、クヌギやコナラといった樹木(じゅもく)の若葉(わかば)がくるくると巻(ま)かれて枝先(えださき)にぶら下がっているのを見たことがある人は少なくないはずです。

巻き終わった葉を切り落とそうとしているところ。時々この状態(じょうたい)で残されていることがあり、そんなときの卵はふ化しても乾燥(かんそう)してしまった葉を食べることができず、育たないのではないかと思われる
巻き終わった葉を切り落とそうとしているところ。時々この状態(じょうたい)で残されていることがあり、そんなときの卵はふ化しても乾燥(かんそう)してしまった葉を食べることができず、育たないのではないかと思われる
 この葉巻(はまき)を作った主がオトシブミたちで、中でも多いのがここで紹介するヒメクロオトシブミです。大きさはわずか5ミリくらいの小さい黒色の虫ですが、若葉とはいってもあの厚(あつ)みのある葉をよくこんなにうまく丸めることができるものだと、その力と器用さに感心せずにはいられません。

 その様子を観察してみると、まず葉を一つ一つ調べて回り、これだと決めると、葉の根元に近いところを両側から切り進んで中心の葉脈だけを残し、その葉がぶら下がって少ししおれるまで待ちます。

地上に落下した葉巻をカットしてみたら、中に卵が1個入っていた。この卵から生まれた幼虫(ようちゅう)は、そのまま周囲の壁(かべ)を食べて成長する
地上に落下した葉巻をカットしてみたら、中に卵が1個入っていた。この卵から生まれた幼虫(ようちゅう)は、そのまま周囲の壁(かべ)を食べて成長する
 それから葉の先端部(せんたんぶ)を少し丸めると、そこに卵(たまご)を1個(こ)産みつけて、口と脚(あし)を使って引き寄(よ)せるようにしながら巻き上げていきます。そうして1個を数分間で巻き上げると、最後に切り落として、また次の葉を探(さが)しに出かけます。

 ちなみに、このオトシブミという名前ですが、昔の人は長い巻き紙に文字を書いて、書き終わるとくるくると巻いて、それを手紙にしていました。そんなことから、「落とし文」という名前をこの虫につけたといわれています。


=2015/04/21付 西日本新聞朝刊=

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