栗林慧 虫の目図鑑

ハキリアリ 葉を運ぶ行列は大混雑

2015年03月17日 11:22

ジャングル内のアリのハイウエー。アリが通る道だけはきれいに片付けられていて、そこをあたかも水が流れているかのように行列が進む。この行列は葉を切り取った場所から巣まで約40メートルあった
ジャングル内のアリのハイウエー。アリが通る道だけはきれいに片付けられていて、そこをあたかも水が流れているかのように行列が進む。この行列は葉を切り取った場所から巣まで約40メートルあった
 数多い種類の昆虫(こんちゅう)の中でも、興味深(きょうみぶか)い生活史をもつことで知られるアリが一番好きです。特に好きなアリが何種類かいますが、ここに紹介(しょうかい)するハキリアリもその一つです。

 私(わたし)がずっと若(わか)いころに外国の本か映画(えいが)でハキリアリの姿(すがた)を見たときに、いつか自分の目で見て撮影(さつえい)したいと思っていました。実現(じつげん)したのは、テレビの取材で中米のパナマを訪(おとず)れたときのことです。運河(うんが)を渡(わた)る船着き場に到着(とうちゃく)して車を降(お)りたところ、私の目の前で、葉をそれぞれ頭の上にかざして大行列で行進していたのです。

切り取った葉をくわえて巣に向かう。葉の上に乗っている小形のアリは、ちゃっかり運んでもらっているのではなく、卵(たまご)を産みつけにくる寄生(きせい)バエを追いはらう役目を受け持っているといわれる
切り取った葉をくわえて巣に向かう。葉の上に乗っている小形のアリは、ちゃっかり運んでもらっているのではなく、卵(たまご)を産みつけにくる寄生(きせい)バエを追いはらう役目を受け持っているといわれる
 出合いを一番楽しみにしていたハキリアリです。いきなりだったので、見入ったまましばらくそこにぼう然と立ちすくんでいたように覚えています。アリはふつう大家族で生活していて、それぞれが自分の役割(やくわり)を決めて行動しています。

地上からの高さは約1・5メートル。1匹(ぴき)のアリが切り取るスピードは20秒ほど。鋭(するど)い口で人がかまれると、一瞬(いっしゅん)で皮膚(ひふ)はやぶれ血が流れ出る
地上からの高さは約1・5メートル。1匹(ぴき)のアリが切り取るスピードは20秒ほど。鋭(するど)い口で人がかまれると、一瞬(いっしゅん)で皮膚(ひふ)はやぶれ血が流れ出る
 ハキリアリが巣の外に出て働いている様子を観察してみました。木の上の高い所では20メートル以上もある枝(えだ)から葉を切り取ってくわえて地上に下りてくると、途中(とちゅう)で立ち止まることなく歩き続けて巣に向かいます。

 葉を取りに向かうもの、葉をくわえて帰るもので行列は大混雑(だいこんざつ)ですが、その通りはジャングルの中でも通行のじゃまになるようなものは何一つなく片付(かたづ)けられているのです。不思議に思って見てみると、そこには葉を運ぶアリとは別に「道路清掃係(せいそうがかり)」がいて、通路に一つでも木の葉のようなものが落ちてくると、すぐさま横の方に片付けてしまいます。

 アリたちは巣の中に運びこんだ葉を重ねておきます。やがて、その葉が朽(く)ちてくると、そこに生える小さいキノコを食べて生活しているのです。


=2015/03/17付 西日本新聞朝刊=

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