栗林慧 虫の目図鑑

キバハリアリ 牙のような口で迫る

2015年01月20日 11:43

口が大きな牙のように発達している。敵(てき)と戦う武器(ぶき)にもなる
口が大きな牙のように発達している。敵(てき)と戦う武器(ぶき)にもなる
 冬の間は活動している昆虫(こんちゅう)がほとんどいないので、写真で紹介(しょうかい)できるとしたら、木の洞(ほら)の中や落ち葉の下や石の下などでじっとしている姿(すがた)しかありません。それではちょっとつまらないので、今回からは何度か外国で撮影(さつえい)してきた昆虫たちの姿を見ていただこうと思います。

バッタに襲(おそ)いかかりかみついたあと、体を曲げて尻の先から毒針を出して刺す
バッタに襲(おそ)いかかりかみついたあと、体を曲げて尻の先から毒針を出して刺す
 最初はオーストラリアにいるキバハリアリです。大きさは2センチ以上もあり、ちょうど日本にいるアシナガバチから羽をとってしまうと同じ大きさくらいになり、アリとしては世界でも最大級といってよいでしょう。見ての通り、大きな牙(きば)のような口を持っているのが特徴(とくちょう)です。

ユーカリの林の中にある巣。地下から運び出された土で盛(も)り上がっている。巣全体はこの地下に直径1メートル以上にわたって広がっている
ユーカリの林の中にある巣。地下から運び出された土で盛(も)り上がっている。巣全体はこの地下に直径1メートル以上にわたって広がっている
 オーストラリアといえば、大陸の大部分が砂漠(さばく)か半砂漠で、昆虫がすむような緑の野山はおもに国の東側に集中しています。そして、このアリがいるのは、その東側のユーカリの木が茂(しげ)る林の中です。顔を一見して感じるように、非常にどう猛(もう)な性質(せいしつ)です。目がよく発達しており、人間などがその巣まで数メートルに近づくとすぐに気がついて警戒(けいかい)し、さらに近づくと牙をむいて突進してきます。そして、この大きな牙でかみついたあと尻(しり)の先から針(はり)を出して刺(さ)し、毒を注射(ちゅうしゃ)します。

 私(わたし)自身、こんなアリに肉薄(にくはく)してその生態(せいたい)を撮影するのですから、知らない間にいきなり刺されたことが何度かありました。いきなりズンとくるその衝撃(しょうげき)は、日本のアシナガバチに刺されたくらいの痛(いた)さだったと覚えています。ハチなら飛んでくる羽音が聞こえるので、すぐにその姿を見て逃(に)げることができますが、アリは音もなく走りよってくるので、ハチよりも怖(こわ)いところがあります。


=2015/01/20付 西日本新聞朝刊=

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