栗林慧 虫の目図鑑

身を守るために 形や色を似せる

2014年12月16日 10:25

クロモンアオシャクの幼虫<br />
かじりとったハギの花びらを体につけて花に化けた幼虫。中央でからだをまるめて休んでいる
クロモンアオシャクの幼虫
かじりとったハギの花びらを体につけて花に化けた幼虫。中央でからだをまるめて休んでいる
 小さい生き物である昆虫(こんちゅう)たちは、その弱い立場を感心せずにはいられない方法で身を守っています。危険(きけん)なとき、一瞬(いっしゅん)で逃(に)げることができる運動神経(しんけい)もそうですが、あるものは体全体を草や木の葉の色に似(に)せたり、体の形を葉や枝(えだ)に似せたりしています。

アゲハモドキ(ガ)<br />
体は小さいがチョウのジャコウアゲハに非常(ひじょう)によく似(に)ている。ジャコウアゲハは毒があるのか鳥が食べないといわれる。そのチョウに似せて身を守っている
アゲハモドキ(ガ)
体は小さいがチョウのジャコウアゲハに非常(ひじょう)によく似(に)ている。ジャコウアゲハは毒があるのか鳥が食べないといわれる。そのチョウに似せて身を守っている
 昆虫たちの最大の敵(てき)は、それをえさにして生きている鳥たちです。昆虫は鳥が育つためのえさになっているとはいえ、食べられてばかりでは滅(ほろ)びてしまいます。そこで、そうならないための知恵(ちえ)を身につけているといってよいでしょう。

本物のジャコウアゲハ
本物のジャコウアゲハ
 昆虫たちが最初から分かって、そのような形や色や模様(もよう)になったのかというと、そんなはずはないでしょう。多分こういうことだと思われます。太古に最初に生まれた当時、昆虫たちは片(かた)っぱしから鳥などのえさになっていた。そんな昆虫の中に、他の仲間とは色や形が異(こと)なるものが出てきて、それで鳥の目から逃(のが)れることができるようになった。そんな個体(こたい)の遺伝子(いでんし)が受け継(つ)がれて代を重ねるうちに、さらにその度合いが強くなったものが現在(げんざい)生きているものと考えられます。

ブドウスカシバ<br />
だれが見てもハチとしか思わない。実体は針(はり)も毒もない昼間飛び回るガの一種。ハチに似せて身を守っている
ブドウスカシバ
だれが見てもハチとしか思わない。実体は針(はり)も毒もない昼間飛び回るガの一種。ハチに似せて身を守っている
 私(わたし)もそのことを確(たし)かめるための実験をしたことがあります。100匹(ぴき)のカイコ(ガ)の幼虫(ようちゅう)を用意し、半分の50匹に目玉の模様をつけて、小鳥がよく来る庭の一角にばらまいておいたところ、早速(さっそく)、小鳥がやってきて食べ始めました。1時間ほどして調べてみたところ、目玉模様がついてないものは1匹残らずいなくなっていましたが、目玉模様がついたものは大部分そのまま残っていました。

ホソヘリカメムシの幼虫<br />
鳥が嫌(きら)いなアリにそっくりな姿(すがた)。動きもアリによく似ている
ホソヘリカメムシの幼虫
鳥が嫌(きら)いなアリにそっくりな姿(すがた)。動きもアリによく似ている
 鳥たちにとってこんな小さなものでも、ふだん恐(おそ)れているヘビや他の動物の目のように見えたのかもしれません。昆虫の中には体といわず羽にまで目玉の模様がついたものがたくさんいますが、身を守るために進化した結果だと思われます。


=2014/12/16付 西日本新聞朝刊=

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