栗林慧 虫の目図鑑

オオフタオビドロバチ 竹筒に巣作り、泥でふた

2014年10月21日 11:43

ガの幼虫を狩(か)り、針を刺して麻酔をし巣に運んできた瞬間(しゅんかん)
ガの幼虫を狩(か)り、針を刺して麻酔をし巣に運んできた瞬間(しゅんかん)
 蜂(はち)といっても人を襲(おそ)って刺(さ)すようなことはなく、ときどき花の蜜(みつ)を吸(す)いに来ているところを見かけるくらいのおとなしい蜂なのです。でも、実際(じっさい)はガの幼虫(ようちゅう)を捕(つか)まえて針(はり)を刺して麻酔(ますい)をかけ、自分の幼虫の餌(えさ)にする、激(はげ)しいハンターといってもよい蜂なのです。

竹筒を割った巣の内部。部屋が泥壁で仕切られ、つり下げられた卵の下に、麻酔をかけられいつも新鮮(しんせん)な状態(じょうたい)のアオムシが置かれている。アオムシはときどき動き回るが、ぶら下がった卵に害は及(およ)ばない
竹筒を割った巣の内部。部屋が泥壁で仕切られ、つり下げられた卵の下に、麻酔をかけられいつも新鮮(しんせん)な状態(じょうたい)のアオムシが置かれている。アオムシはときどき動き回るが、ぶら下がった卵に害は及(およ)ばない
 その巣は、枯(か)れて折れた直径が2センチくらいの竹筒(たけづつ)の中に作られます。私(わたし)が最初に見つけたのは、垣根(かきね)に使われている細長い竹のいちばん外れの穴(あな)の中に、蜂がちょうど入って行く姿(すがた)でした。

 2、3分すると出て行き、そして戻(もど)ってくるその様子を観察してみました。すると、頭の大きさほどの泥(どろ)のかたまりを数回運び入れた後、今度はチョウかガの幼虫と思われるアオムシを数匹(ひき)運び入れて、そしてまた泥をとりに行くといった動作を何度か繰(く)り返します。最後に、竹筒の入り口を泥でふたをして、どこかへ行ってしまいました。

竹筒の中であお向けになり、尾端(びたん)から卵を産み出すところ。最初に尾端を天井におしつけて糸を出す。その糸の先についている卵が現(あらわ)れる
竹筒の中であお向けになり、尾端(びたん)から卵を産み出すところ。最初に尾端を天井におしつけて糸を出す。その糸の先についている卵が現(あらわ)れる
 このとき、蜂が竹筒の中でどんなことをしていたのか知りたくなり、竹筒を真っ二つに割(わ)ってみました。そこに見たものは、泥の壁(かべ)で仕切られたいくつもの部屋に、それぞれ4、5匹のアオムシが入れてあり、天井(てんじょう)から細い糸を使って細長い形の卵(たまご)が一つつり下げてありました。卵を宙(ちゅう)に浮(う)かせてあるのは、幼虫の餌であるアオムシが動き回っても、卵にキズがつかないように考えられた処置(しょち)だと思われます。

 いったい、どうやってこんな産卵(さんらん)のしかたをするのか。私はどうしてもその様子を写真で撮(と)りたくなり、苦心の末、ついに医療用(いりょうよう)の内視鏡(ないしきょう)を用いて撮影(さつえい)に成功しました。


=2014/10/21付 西日本新聞朝刊=

バックナンバー

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]