栗林慧 虫の目図鑑

オオスズメバチ 危険な撮影に3日間

2014年07月15日 13:39

ミツバチの巣箱のかたわらに、赤外線自動撮影装置(そうち)を仕かけておいたところ、こんな姿が写っていた
ミツバチの巣箱のかたわらに、赤外線自動撮影装置(そうち)を仕かけておいたところ、こんな姿が写っていた
 あるとき、山の中を歩いていると、前方に何匹(なんびき)ものスズメバチが飛んでいるのを見つけました。近くに巣があるのかもしれないと思って周りを見回すと、15メートルほど向こうの大木の根元に出入りしているのが分かりました。これはいいものを見つけたと思って撮影(さつえい)の準備(じゅんび)に取りかかったのですが、相手は超危険(ちょうきけん)なオオスズメバチ、長靴(ながぐつ)をはき丈夫(じょうぶ)な雨着(あまぎ)の上下を着て、頭にも帽子をかぶり、テープなどですき間をすっかりふさぎ、そうしてカメラを手に恐(おそ)る恐る近づいて行きました。

2匹のハチが抱(だ)き合うような格好(かっこう)で、じっと動かず、ときどき口をかみ合わせていた。えさを分け与えているのか、けんかをしているのか、意味不明の行動
2匹のハチが抱(だ)き合うような格好(かっこう)で、じっと動かず、ときどき口をかみ合わせていた。えさを分け与えているのか、けんかをしているのか、意味不明の行動
 巣は枯(か)れて3メートルくらいの高さのところで折れてしまっているシイの木の根元にあるらしく、ハチたちはそこに開いている直径3センチくらいの穴(あな)をさかんに出入りしていました。その姿(すがた)を撮影しようと、そこにしゃがみこんだところ、早くも何匹ものハチが襲(おそ)いかかってきました。周りに人はいないし、またとない機会なので、巣の中もぜひ撮影したいと考えて、明くる日は早速(さっそく)その作業にかかりました。

 

 

朽ち木の空洞(くうどう)を利用した巨大(きょだい)な巣。今季利用しているのは下から6番目まで、それより上は前季に使用されたものと思われる
朽ち木の空洞(くうどう)を利用した巨大(きょだい)な巣。今季利用しているのは下から6番目まで、それより上は前季に使用されたものと思われる
 エーテルを購入(こうにゅう)し、巣がある朽(く)ち木の上の方に穴を開けて、そこからエーテルをたっぷり流し込(こ)んで、しばらく様子を見ていると、中から聞こえる羽音が小さくなり、巣口に麻酔(ますい)がきいて動けなくなったハチの姿が見えるようになったところを見計らって、ノコやナタを使って慎重(しんちょう)に朽ち木を切り崩(くず)していたところ、突然(とつぜん)右足の太ももに激痛(げきつう)が走りました。ワッと驚(おどろ)いて見たところ、そこに2匹のハチがしがみついて毒針(どくばり)をさかんに突(つ)き立てていました。

 どうやら作業をしている間に、麻酔から覚めたハチがはい上がってきたもののようです。刺(さ)されたその痛(いた)さといったら、とても口で表現(ひょうげん)できるものではありません。撮影どころではなくなって、次の日は別の方法でハチたちを片付(かたづ)けて、写真のような大きな巣の全体が見える写真を撮(と)り終わるまで3日間かかりました。


=2014/07/15付 西日本新聞朝刊=

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