栗林慧 虫の目図鑑

羽化 変身、命の不思議

2014年05月21日 11:25

カブトムシ 地下約10センチの部屋の中。サナギから羽化したばかりでまだ角の部分にサナギの殻が残っているが、この後、からだが丈夫(じょうぶ)になり、色も変わって地上に出るころにはきれいに取れてしまう
カブトムシ 地下約10センチの部屋の中。サナギから羽化したばかりでまだ角の部分にサナギの殻が残っているが、この後、からだが丈夫(じょうぶ)になり、色も変わって地上に出るころにはきれいに取れてしまう
 昆虫(こんちゅう)が幼虫(ようちゅう)から成虫に変身することを羽化(うか)と言いますが、この羽化には二つの形態(けいたい)があります。チョウやカブトムシなどのように幼虫が成育してサナギになり、そのサナギから羽化して成虫になることを完全変態(へんたい)といい、バッタやセミなどのようにサナギにはならないで羽化する状態(じょうたい)を不完全変態といいます。

 

モンシロチョウ キャベツの葉裏(はうら)で羽化の途中。サナギの背(せ)が割(わ)れて、わずか20秒ほどで抜け出てしまうが、この時点ですでに羽が伸(の)びはじめている
モンシロチョウ キャベツの葉裏(はうら)で羽化の途中。サナギの背(せ)が割(わ)れて、わずか20秒ほどで抜け出てしまうが、この時点ですでに羽が伸(の)びはじめている
 昆虫はこのように唯一(ゆいいつ)変態をする生き物ですが、私(わたし)はこれまで、そんな昆虫たちのその瞬間(しゅんかん)を目撃(もくげき)したい、撮影(さつえい)したい、とずっと思い続けてきました。最初に興味(きょうみ)を引かれたのは、小学生のときに、朝通学の途中(とちゅう)、いつも通る道路脇(わき)のカラタチの木の枝(えだ)に変な形の、からだが細い糸で縛(しば)られている不思議な物体をみつけたのです。棒(ぼう)でつついてみると、ピクピクとからだをよじるように動かすので、どうやら生き物らしいことは分かったのですが、なんとも不思議なものを発見して驚(おどろ)いたのでした。

 

クマゼミ 夜間羽化の途中。幼虫はサナギにはならず、成長すると地中から出てきて草木に登って羽化し、翌朝(よくちょう)には飛び立っていく
クマゼミ 夜間羽化の途中。幼虫はサナギにはならず、成長すると地中から出てきて草木に登って羽化し、翌朝(よくちょう)には飛び立っていく
 毎日そこを通るたびに見ていたのですが、ある朝のこと、なんとそこには真っ黒い大きなチョウがとまっていて、いつも見ていた不思議な物体は、透明(とうめい)な抜(ぬ)け殻(がら)に変わっていました。その場の状況(じょうきょう)を見て、私はすぐに黒いチョウがそこから抜け出てきたのだろうと考えました。生命の不思議さに触(ふ)れた最初の記憶(きおく)だったように覚えています。

 不思議といえば、羽化でもチョウやバッタなどと異(こと)なり、カブトムシやクワガタムシなどは、あの複雑(ふくざつ)な姿(すがた)がサナギからどうやってうまく抜け出ることができるのか。それが見たくて観察したことがあります。その結果、するりと抜け出るのではなく、途中から脚(あし)をさかんに動かして、しゃにむに脱(ぬ)ぎ捨(す)てるような動作で出てくることが分かりました。

ツチイナゴ サナギにならない不完全変態の羽化。幼虫と成虫の姿の違(ちが)いは羽があるか無いかで分かる
ツチイナゴ サナギにならない不完全変態の羽化。幼虫と成虫の姿の違(ちが)いは羽があるか無いかで分かる
 


=2014/05/20付 西日本新聞朝刊=

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