栗林慧 虫の目図鑑

昆虫たちの事故 「うっかり」悲しい結末

2014年03月18日 11:40

腹部(ふくぶ)をヤブカラシの巻きひげにからまれてしまったトンボ。ときどき羽ばたいてもがくが、脱出できぬ間に、鳥の餌になったもよう
腹部(ふくぶ)をヤブカラシの巻きひげにからまれてしまったトンボ。ときどき羽ばたいてもがくが、脱出できぬ間に、鳥の餌になったもよう
 人間に限(かぎ)らず、他の生き物たちも生きている間にいろいろな事故に遭遇(そうぐう)します。そして、交通事故が最も多いように思われます。人間のエゴの産物である道路や車が現(あらわ)れた結果、いったいどのくらいの命が失われているのか想像(そうぞう)もつきません。ひかれたり、飛行中に車にぶつかって死んだりしたチョウやトンボの死骸(しがい)がワイパーやラジエーターに挟(はさ)まっているのをよく見かけることがあるでしょう。

キャベツの虫食い穴(あな)から出ようとして挟まってしまい死んでいた。幼虫の時に食べてできた穴かもしれない
キャベツの虫食い穴(あな)から出ようとして挟まってしまい死んでいた。幼虫の時に食べてできた穴かもしれない
 ここでは、人が関わるそんな事故ではなく、昆虫(こんちゅう)たちが自然の中で活動している間に、うっかりドジを踏(ふ)んで事故った、という感じの目撃(もくげき)写真を紹介(しょうかい)したいと思います。

 ある日の朝のことです。まだ日が差さない庭の片隅(かたすみ)に目をやると、遠目にも分かるトンボが1匹(ぴき)もがいている姿(すがた)が目に入りました。近づいてよく見ると、なんと、その細い腹(はら)の部分にヤブカラシと思われる植物のつるが巻(ま)き付いていて、そのために飛ぶことができずにもがいているのでした。たぶん、前日の夕方から寝(ね)ている夜の間に、徐々(じょじょ)に伸(の)びてきた植物の巻きひげが巻き付いたのでしょう。目が覚めてから気がつき、それを外そうとして必死にもがいている姿だったのです。

結婚(けっこん)飛行の練習で巣から飛び出したものの、慣(な)れない飛行でうっかり松葉のような細い植物の葉に挟まってしまい、脱出できぬまま死骸となっている
結婚(けっこん)飛行の練習で巣から飛び出したものの、慣(な)れない飛行でうっかり松葉のような細い植物の葉に挟まってしまい、脱出できぬまま死骸となっている
 助けてやろうと思ったのですが、そこは自然に起こった出来事なので、もう少し様子を見ることも必要と考えて、1時間ほどして戻ってみると、もうその姿はありませんでした。

 かなりきつく巻き付いていたつるの感じからして、とても自力脱出(だっしゅつ)は困難(こんなん)と思っていたので、意外な感じがしたものです。後になって考えるに、鳥に見つかって餌(えさ)になってしまったとみるのが正解(せいかい)のようです。


=2014/03/18付 西日本新聞朝刊=

 

カラスノエンドウの巻きひげの先端(せんたん)が羽の付け根に引っかかって飛ぶことができず、1時間近くもがき続けた結果、やっと外れて落下した
カラスノエンドウの巻きひげの先端(せんたん)が羽の付け根に引っかかって飛ぶことができず、1時間近くもがき続けた結果、やっと外れて落下した
 

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