栗林慧 虫の目図鑑

ウスバカゲロウ 待ち受けるアリジゴクの主

2014年02月18日 11:04

暗闇(くらやみ)を飛ぶ成虫、前翅(ぜんし)と後翅(こうし)を交互(こうご)に羽ばたかせて飛行している
暗闇(くらやみ)を飛ぶ成虫、前翅(ぜんし)と後翅(こうし)を交互(こうご)に羽ばたかせて飛行している
 雨の当たらない崖(がけ)の下や建物の縁(えん)の下などの乾(かわ)いた地面の上に直径数センチのすり鉢(ばち)状(じょう)の穴(あな)(くぼみ)を見ることがよくあります。

 この穴は、俗(ぞく)にアリジゴクと呼(よ)ばれるものです。そこを通りかかったアリなどの小さな生き物がうっかりその穴に落ち込(こ)んで、あわてて逃(に)げ出そうとしても、砂(すな)でできた斜面(しゃめん)が次々に崩(くず)れて、なかなか逃げ出すことができません。

神社の床下(ゆかした)に見られる幼虫の巣、アリジゴク。ときどきアリや小さいクモなどが通りかかって落ち込み、とらえられる
神社の床下(ゆかした)に見られる幼虫の巣、アリジゴク。ときどきアリや小さいクモなどが通りかかって落ち込み、とらえられる
 そうしているうちに、底に潜(もぐ)り込んで隠(かく)れている穴の主にたちまち捕(つか)まって、引きずり込まれて食べられてしまいます。

 このアリジゴクの主こそウスバカゲロウの幼虫(ようちゅう)なのです。幼虫は自分で餌(えさ)を探(さが)して歩き回ることはなく、とにかくこのすり鉢状の罠(わな)に獲物(えもの)が落ち込んでくるのを、ただただ待ち続けているのです。

すり鉢状の巣の中心部、鋭(するど)い牙(きば)のある頭部をのぞかせて獲物を待っている
すり鉢状の巣の中心部、鋭(するど)い牙(きば)のある頭部をのぞかせて獲物を待っている
 そのために、運よく何度も獲物を捕ることができたものは、そのシーズンのうちに成虫になることができます。しかし、中にはいつまでたっても餌にありつけず、ときどき場所を変えてはいるものの、それでも餌が捕れないと、2年、ときには4年もたってからやっと成虫になることが少なくないそうです。

 トンボに似(に)た成虫は夜行性(やこうせい)で、暖(あたた)かい季節の夜、大きな羽を緩(ゆる)やかに羽ばたかせて闇(やみ)の中を飛び、ときに明るい電灯の光の中に飛んできているのを見かけることがあります。


=2014/02/18付 西日本新聞朝刊=

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