栗林慧 虫の目図鑑

昆虫たちの越冬 身を守りながら春を待つ

2014年01月21日 14:34

木立の中、ツバキの葉裏(はうら)にとまって越冬(えっとう)する2匹のチョウ、ウラギンシジミ
木立の中、ツバキの葉裏(はうら)にとまって越冬(えっとう)する2匹のチョウ、ウラギンシジミ
 暖(あたた)かい季節の野山にあれほど活発に飛び回っていた昆虫(こんちゅう)たちの姿(すがた)を、寒いいまの季節はほとんど見ることはありません。

 しかし、死に絶(た)えてしまったわけではなく、種類によって卵(たまご)か幼虫(ようちゅう)かさなぎか、あるいは成虫のままの姿で、どこか目につかない場所で、じっと次の暖かい季節が訪(おとず)れるのを待っているのです。越冬(えっとう)場所は特に決まっていませんが、日が当たって暑くなったり、気温がひどく下がったりするような場所を避(さ)けて、一日のうちであまり温度変化のない場所が選ばれているようです。

雑木林(ぞうきばやし)の下の落ち葉の中で越冬しているゴマダラチョウの幼虫
雑木林(ぞうきばやし)の下の落ち葉の中で越冬しているゴマダラチョウの幼虫
 地上では落ち葉の中や石の下、木の皮の間や木の穴(あな)の中などでじっとしているところをよく見かけます。卵やさなぎなど、もともとからだを動かすことのできない状態のものは別として、からだを動かすことのできる幼虫や成虫は、真冬でも暖かい穏(おだ)やかな日には、からだを動かしているところを見かけます。

 

枯(か)れ木を切り、中で越冬しているクマバチの姿(すがた)を撮影(さつえい)。右上に入り口の穴が見える
枯(か)れ木を切り、中で越冬しているクマバチの姿(すがた)を撮影(さつえい)。右上に入り口の穴が見える
 タテハチョウなどは、暖かい太陽光線の中に飛び出してきて、まるで日なたぼっこでもするように羽をいっぱいに開いて暖をとっている姿をよく見かけます。中にはミツバチやハナアブなどのように、冬に咲(さ)くヤツデやビワの花にやって来て、いつもどおりに甘(あま)い蜜(みつ)をさかんになめとっている姿が見られます。東北の雪の多い地方では、野原の草の茎(くき)に付いているカマキリの卵の位置が高い年には大雪となり、低い年には雪が少ないということが、長年の観察から分かっています。身を守るために、前もってその場の状態(じょうたい)を知る能力(のうりょく)を持つ昆虫という生きものに、いつも不思議な生命を感ぜずにはいられません。

 

=2014/01/21付 西日本新聞朝刊=

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