栗林慧 虫の目図鑑

スズムシ 優しく響く音色は特別の趣

2013年11月19日 15:09

道路際の石垣の間で鳴いているところ。鳴き声のもとである激しい羽の動きを少しブラして表すために、閃(せん)光時間が遅いストロボ(300分の1秒)を用いて撮影した
道路際の石垣の間で鳴いているところ。鳴き声のもとである激しい羽の動きを少しブラして表すために、閃(せん)光時間が遅いストロボ(300分の1秒)を用いて撮影した
 初秋の野山に出てみると、昼夜を問わず鳴く虫たちの声が聞こえてきます。特に夜ともなるとその声は大合唱となって、あたり一面虫たちの大オーケストラの会場と化しています。たくさんの種類の虫たちがそれぞれ勝手に鳴いている中で、スズムシの「リーンリーン」と優(やさ)しく響(ひび)く音色は特別の趣(おもむき)があるものです。

地中に産みつけられた卵からふ化して地表に出てくる幼虫
地中に産みつけられた卵からふ化して地表に出てくる幼虫
 そんな昆虫(こんちゅう)ですから、昔から人々に愛され、家で飼育(しいく)する人も少なくありません。飼育してガラスケースの中で鳴いている姿(すがた)を見るのは簡単(かんたん)ですが、その様子を野外で観察することはとても難(むずか)しく、草やぶの根元付近から聞こえてくる鳴き声を頼(たよ)りに用心して近づいていっても、1メートルぐらいのところで、早くもその気配を察して鳴きやんでしまいます。

 常(つね)に長い触角(しょっかく)を動かして、周りの様子をうかがい、草を伝わってくる気配や、地面から伝わってくる振動(しんどう)をいち早く感じ取って鳴きやんでしまいます。鳴きやんだところでじっとしていると、やがてまた鳴き始めるのですが、そこでさらに近づこうとすると、その気配でまたすぐに鳴きやんでしまいます。

 そんな具合ですから、鳴いている姿を撮影(さつえい)するのはとても大変。ましてや、撮影は少なくとも30センチぐらいまで近づかなければならず、じゃまな手前の草をのけたりしていると、驚(おどろ)いたスズムシはその間にどこかに逃げていってしまいます。

 野外で実際(じっさい)に鳴いている姿を撮影するときは、この写真のように、たまたま撮影しやすい場所で鳴いているところを見つけることが成功のカギだといってよいでしょう。


=2013/09/17付 西日本新聞朝刊=

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