栗林慧 虫の目図鑑

スズメガ 体を宙に浮かせたまま蜜を吸う

2013年11月19日 15:14

深夜咲いているオシロイバナを目指して飛んできたコスズメ。このあと巻(ま)き込んでいる長い口を伸(の)ばして花の中の蜜を吸う
深夜咲いているオシロイバナを目指して飛んできたコスズメ。このあと巻(ま)き込んでいる長い口を伸(の)ばして花の中の蜜を吸う
 ガは夜しか活動しないと思われていますが、すべてが夜行性(やこうせい)とは限(かぎ)りません。スズメガと呼(よ)ばれるガの仲間には、夜だけではなく、昼間活動するものもいます。

 よく見かけるのはホウジャクと呼ばれる種類です。昼間、チョウたちと一緒(いっしょ)によく花の蜜(みつ)を吸(す)っています。

雨上がりの午後、ぬれたキバナコスモスの花に来て、蜜を吸っているホシホウジャク。その姿とすばやい動きを見て、これがガの仲間だと気がつく人は少ない
雨上がりの午後、ぬれたキバナコスモスの花に来て、蜜を吸っているホシホウジャク。その姿とすばやい動きを見て、これがガの仲間だと気がつく人は少ない
 その蜜の吸い方は変わっています。チョウたちは足で花にとまって蜜を吸いますが、ホウジャクは、ヘリコプターが空中でとどまるときのように、からだを宙(ちゅう)に浮(う)かせたまま長い口を花の中に差し込(こ)んで蜜を吸います。一つの花で蜜を吸う時間は長いときでも5秒たらず。ふつうは2秒もしないうちに次の花に行ってしまいます。

 スズメガには忘(わす)れることのできない思い出があります。ぼくがまだ昆虫(こんちゅう)の写真を写しはじめたころの話です。ある夏の夜、庭に咲(さ)いているオシロイバナの花にスズメガがやってくるのを見つけました。どうしても蜜を吸う瞬間(しゅんかん)の姿(すがた)を撮影したいと思い、工夫(くふう)を凝(こ)らし、何度も挑戦(ちょうせん)。そして3年目の夏。やっと撮影できたときの興奮(こうふん)は、今でもよみがえってきます。

 最初のころは、暗闇の中で薄暗いライトをつけ、花のそばでじっと待ち続けました。スズメガが花にきたところをすかさず写すという方法です。しかし、スズメガが近寄(ちかよ)ってこないことや、薄暗い中ではピントを合わせられないことなどで失敗。次いで、カメラを三脚(さんきゃく)に取り付けて、一つの花にピントを合わせておき、離(はな)れた位置からリモコンでシャッターを切るという方法で、やっと撮影に成功しました。

 今では電子技術(ぎじゅつ)を応用(おうよう)して、スズメガが来ると自動的にシャッターが切れるカメラを使い撮影を続けています。


=2013/07/16付 西日本新聞朝刊=

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