栗林慧 虫の目図鑑

クロオオアリ 春だけの激しいけんか

2013年11月19日 15:08

チョウの羽を運ぶクロオオアリ。食べられる部分はほとんど無いと思われるものを、一生懸命(いっしょうけんめい)に運んでいた
チョウの羽を運ぶクロオオアリ。食べられる部分はほとんど無いと思われるものを、一生懸命(いっしょうけんめい)に運んでいた
 寒い冬を土の中の巣で過(す)ごしていたアリたちは暖(あたた)かい春が来ると、一斉(いっせい)に巣から出て来て活動をはじめます。

 冬の間、閉(と)ざしていた巣口を開けて最初にまず始めるのは、地上に出入りするためのトンネルや部屋の拡張(かくちょう)工事です。アリたちは巣の中から削(けず)り取った泥(どろ)や石の粒(つぶ)をせっせと運び出す一方で、巣の外の様子を偵察(ていさつ)に出て行くものもいます。ちょうどこの時期、巣を出て行ったアリたちが他の巣のアリたちと出合ってけんかをしている光景をよく見かけます。

戦いのあと。手足や首を切断(せつだん)されてもなおかみついたままの姿(すがた)で死んでいる
戦いのあと。手足や首を切断(せつだん)されてもなおかみついたままの姿(すがた)で死んでいる
 暖かい季節、いろんな種類のアリたちが歩き回って出合う機会があっても、めったにけんかすることはありません。それがこの時期に限(かぎ)って、同じ種類のアリたちが激(はげ)しいけんかを始めるというのには訳(わけ)がありそうです。

 普段(ふだん)、アリは自分たちのなわばりを示(しめ)すために巣の周りの地面ににおいを付けて、他の巣のアリたちが近づかないようにしています。それが秋から春までの長い期間、外に出ないのでそのにおいがすっかり消えてしまいます。久(ひさ)しぶりに地上に出たところで、他の巣のアリたちとなわばりや見つけた獲物(えもの)を争(あらそ)って戦いになるものと思われます。

腹部を曲げて、その先から毒スプレーを発射する
腹部を曲げて、その先から毒スプレーを発射する
 アリたちの戦いは非常(ひじょう)に激しいものです。まずアリ同士が向き合うと、からだを曲げ腹部(ふくぶ)の先を相手に向けて毒スプレーを発射(はっしゃ)します。蟻酸(ぎさん)と呼(よ)ばれるその液体(えきたい)が相手の口の中に入ると死ぬことがあります。しかし、多くの場合、お互(たが)いにかみ付き合って手足や胴体(どうたい)までもがちぎれてしまうまで戦い続けます。



=2013/05/21付 西日本新聞朝刊=

バックナンバー

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]