栗林慧 虫の目図鑑

ミツバチ 春風に 羽音にぎやか

2013年04月16日 19:34

朽(く)ちた木の中に作られた自然の巣に、足に花粉をつけた働きバチが帰ってきた(巣の中にカメラを入れ、入り口に向かって撮影)
朽(く)ちた木の中に作られた自然の巣に、足に花粉をつけた働きバチが帰ってきた(巣の中にカメラを入れ、入り口に向かって撮影)
 ミツバチは日本中どこにでも住んでいて、私(わたし)たち人間の身の回りでいつも見られる昆虫(こんちゅう)です。春になって花が咲(さ)きはじめると、最初に飛んでくるのがミツバチです。

 一面に咲いている菜の花やレンゲの花畑に行ってみると、たくさんのミツバチが飛び回り、春風の中に、ぶんぶんとにぎやかに羽音が聞こえてきます。わが家の庭にもいろいろな花が咲きはじめてミツバチの姿(すがた)が見られるようになると、いよいよ今年も虫たちの季節がやってきたと感じて、思わずカメラを持ち出さずにはいられない気持ちになります。

ミツバチがツバキの花の蜜(みつ)を飲んででてきた
ミツバチがツバキの花の蜜(みつ)を飲んででてきた
 毎年毎年、撮影(さつえい)しているミツバチでも、今度はこんな花に来ているところを撮(と)ろうとか、こんな瞬間(しゅんかん)を撮ろうとか、冬の間にいろいろな準備(じゅんび)をしておいて、そしていよいよその時期がやって来るとワクワクした気持ちで撮影をはじめるのです。

 しかし、そんなミツバチがここ数年の間にだんだんと数が少なくなって、今年の春には暖(あたた)かい天気の下に庭のウメの花が満開だというのに、ほんの少ししか姿を見せてくれませんでした。レンゲ畑でもあまり姿を見かけません。

 世界的にミツバチがいなくなりつつあるというニュースを前に聞いたことがあります。そのために果実の収穫(しゅうかく)に影響(えいきょう)が出始めているとのことです。原因(げんいん)は人間がミツバチたちを働かせ過(す)ぎているのではないかとか、農薬のせいだろうといわれていますが、いずれにしても、ハチたちが巣から飛び立っていったきり二度と戻(もど)って来なくなる、不思議な現象(げんしょう)がおこっているのです。

 野山に花が咲いてもミツバチの姿が見られないのは寂(さび)しいものです。手遅(ておく)れにならないうちに、急いで保護対策(ほごたいさく)を考えなければなりません。
 

 ◇毎月第3火曜日は「虫の目図鑑(ずかん)」を掲載(けいさい)します。生物生態(せいたい)写真家の栗林慧(くりばやしさとし)さんが撮影した昆虫たちが登場します。
 

栗林 慧さん
栗林 慧さん
 ●栗林 慧さん
 1939(昭和14)年、中国(ちゅうごく)・瀋陽(しんよう)で生まれ、3歳の時に父の郷里(きょうり)・長崎(ながさき)県田平町(たびらちょう)(現・平戸(ひらど)市田平町)に転居(てんきょ)。父の死に伴(ともな)い、50年に一家で東京(とうきょう)へ。陸上自衛隊(じえいたい)、保険(ほけん)会社などに勤務(きんむ)、東京綜合写真専門学校(とうきょうそうごうしゃしんせんもんがっこう)で写真技術(ぎじゅつ)を学ぶ。1969年、プロの生物生態(せいたい)写真家となり、77年に田平町に戻(もど)った。「虫の目」で見える風景を再現(さいげん)したといわれる医療用内視鏡(いりょうようないしきょう)を基(もと)にしたレンズを開発、センサーを利用した自動撮影装置(さつえいそうち)、5万分の1秒の高速ストロボも製作(せいさく)し、昆虫(こんちゅう)や植物などの生態写真に新境地(しんきょうち)を開いた。国内外で高い評価(ひょうか)を得ており、91年に西日本文化賞、92年に日本写真協会年度賞を受賞。2006年には科学写真のノーベル賞ともいわれる「レナート・ニルソン賞」を受賞した。08年には紫綬褒章(しじゅほうしょう)。著作(ちょさく)は「栗林慧全仕事」「The MOMENT」「昆虫の飛翔(ひしょう)」など多数。


=2013/04/16付 西日本新聞朝刊=

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