紙面から

【ワクワク 種子島】<上>宇宙センター編 実物ロケット 宇宙が間近

2016年05月03日 14:07

H2ロケット7号機が分解(ぶんかい)されて展示されていた
H2ロケット7号機が分解(ぶんかい)されて展示されていた
 九州本土から約40キロ南にある鹿児島(かごしま)県・種子島(たねがしま)。ロケットの打ち上げや鉄砲(てっぽう)伝来の地として知られるこの島を4人のこども記者が、2泊(はく)3日の旅をしながら取材しました。3回に分けて紹介(しょうかい)します。

 種子島(たねがしま)は「日本で一番宇宙(うちゅう)に近い島」とも呼(よ)ばれる。島の南端(なんたん)に日本最大のロケット発射(はっしゃ)場「種子島宇宙センター」があるからだ。こども記者たちは、ロケットの実物や発射地点などを見て回り、“宇宙の入り口”であることを実感した。

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 ●TDL20個分の広さ

 「うわー、すっげー広い」「リゾート地みたい」。センター内の展望台(てんぼうだい)に立った4人は歓声(かんせい)を上げた。背中(せなか)側には真っ青な海、目の前には砂浜(すなはま)と芝生(しばふ)広場が広がる。発射地点にある鉄塔(てっとう)も遠くかすんで見えた。時津(ときつ)記者は「“世界一美しいロケット発射場”と言われる理由が分かる」と息をのんだ。

 敷地(しきち)は東京ディズニーランド(TDL)20個分の広さで、島全体の約2%を占(し)める。センターによると、赤道に近い場所からロケットを打ち上げた方が遠心力が働いて燃料(ねんりょう)を節約できるという。沖縄(おきなわ)県が返還(へんかん)される前だったので、発射場がここに建設(けんせつ)されたそうだ。

 ●スカイツリーみたい

 私(わたし)たちは見学バスツアーに参加した。まず向かったのは、かつてロケットの整備場(せいびじょう)だった「大崎(おおさき)第一事務所(じむしょ)」。中には、打ち上げが中止になったH2ロケット7号機が保管(ほかん)されていた。直径約4メートル、長さ20メートル以上もある機体の一部は東京スカイツリーを横たえたみたいだった。こんなに大きなロケットを打ち上げる発射地点を早く見たくなった。

 センターには、打ち上げる場所が3カ所ある。その一つ「大型ロケット発射場」に向かった。高さ60メートルを超(こ)す鉄塔が2本並(なら)び、その間にロケットを設置(せっち)して打ち上げるという。

 幼(おさな)い頃(ころ)、体が弱かった豊田(とよた)記者は「宇宙が膨張(ぼうちょう)を続ける強さ」をたくましいと感じてきた。鉄塔の先に宇宙への近道があると想像(そうぞう)したら、「もっと宇宙に近づきたい」という思いが強くなった。

 最後に、打ち上げを指示する「総合(そうごう)指令棟(とう)」を訪(おとず)れた。テレビでよく見る、パソコンがずらりと並ぶ一室だ。アトキンソン記者は、発射直後の室内は「(ロケットの)音がだんだん小さくなって、(その後、関係者の)歓声が響(ひび)くのだろう」と想像した。

 ●発射1回100億円

 バスツアーを終えた夕方、センター敷地内にある展示施設(てんじしせつ)「宇宙科学技術館(ぎじゅつかん)」に行った。国際(こくさい)宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の実物大模型(もけい)などが並ぶ中で、おなかが減(へ)ってきた私たちは宇宙食が気になった。おにぎり、ラーメン、くりようかん…。納豆(なっとう)はねばねばが漂(ただよ)ってしまうから無重力の宇宙へは持っていけないそうだ。納豆の糸が宇宙船内を漂う様子を思(おも)い浮(う)かべて、みんなで笑った。

 館内の劇場(げきじょう)では、打ち上げる時の大音量を体験できる。発射地点から約3キロの場所で録音した実際(じっさい)の音だ。スクリーンに映(うつ)し出(だ)されたロケットが打ち上げられて数秒後、ゴオーと地鳴りのような音が響いた。山口(やまぐち)記者が「1回の打ち上げにいくらかかりますか?」とガイドさんに質問(しつもん)すると、約100億円と教えてくれた。音も金額(きんがく)も想像をはるかに超えていた。

 取材後、豊田記者は新聞社に寄(よ)せた記事に「(宇宙に)挑戦(ちょうせん)し続ける努力と情熱(じょうねつ)に心を動かされた」とつづり、センターで「パワーをもらった」と締(し)めくくった。

 ●打ち上げ成功「よっしゃ!」 JAXA職員 春木彩さん

 種子島宇宙(たねがしまうちゅう)センターでは、宇宙航空研究開発機構(きこう)(JAXA)の職員約80人が働いている。私(わたし)たちは、ロケットの打ち上げを左右する気象の観測(かんそく)をする春木彩(はるきあや)さん(25)に仕事のやりがいなどを聞いた。

 -なぜJAXAに入ったのですか?(アトキンソン記者)

 「インターネットでロケット打ち上げの映像(えいぞう)を見て、中学2年の時からJAXAに憧(あこが)れていました。航空宇宙工学を学べる大学を受験しましたが、落ちてしまって、別の大学の海洋学部に行きました。それでも絶対(ぜったい)にJAXAに行くぞと諦(あきら)めませんでした」

 -やりがいを感じるのはどんなとき?(時津(ときつ)記者)

 「宇宙に関(かか)われる仕事はそんなに多くない。それに携(たずさ)われていることがうれしいし、打ち上げが成功したときは『よっしゃ!』という気持ちになります」

 -打ち上げがない日は何をしていますか?(山口(やまぐち)記者)

 「ロケットに載(の)せる衛星(えいせい)は打ち上げの3カ月前にはセンターに届(とど)きます。年に4~5回打ち上げるときもあるので、常(つね)に打ち上げに向けて準備(じゅんび)している感じですね。米航空宇宙局(NASA)の人と一緒(いっしょ)に仕事をするときもあります」

 -春木さんにとってロケットとは?(豊田(とよた)記者)

 「JAXAに入る前はロケットは花形だと思っていたけれど、実は衛星などを宇宙に運ぶための脇役(わきやく)。私も縁(えん)の下の力持ちになれるよう頑張(がんば)りたいですね。そしていつか、まだ日本にはない有人ロケットを開発したいなと思っています」

 ●わキャッタ!メモ

 ▼種子島宇宙センター 1968年、センターで初めてロケットを打ち上げた。人工衛星(えいせい)打ち上げの日本の中心的な施設(しせつ)で、敷地(しきち)面積は約970ヘクタール。ロケットの組み立てから打ち上げ後の追尾(ついび)までを行っている。国内の打ち上げ施設は、ほかに内之浦(うちのうら)宇宙(うちゅう)空間観測所(かんそくじょ)(鹿児島(かごしま)県)がある。

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=2016/04/16付 西日本新聞朝刊=

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