紙面から

【おしごと拝見】甲ちゅう作り 丸武産業 鹿児島県薩摩川内市

2015年03月03日 21:02

左から織田信長、徳川家康、加藤清正のかぶとをかぶった垣内、福崎、塩崎各記者
左から織田信長、徳川家康、加藤清正のかぶとをかぶった垣内、福崎、塩崎各記者
 黒田官兵衛(くろだかんべえ)に伊達政宗(だてまさむね)、前田利家(まえだとしいえ)…。こうしたNHK大河(たいが)ドラマの主人公になった武将(ぶしょう)といえば、まず思い浮(う)かぶのは、よろいかぶと(甲(かっ)ちゅう)姿(すがた)かもしれない。国内で、テレビ・映画(えいが)のさつえいなどに使われる等身大の甲ちゅうの約8割(わり)を作っている会社「丸武(まるたけ)産業」(鹿児島(かごしま)県薩摩川内(さつませんだい)市)をたずねた。

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■武将のシンボル 豪華だけど軽い

 本社の工房(こうぼう)では、約50人の職人(しょくにん)さんが働いている。甲ちゅう1領(りょう)は、多いもので約4千の部品からできているそうだ。

 かぶとやよろいの胴(どう)の部分は、鉄の板をはさみで切り、たたいて曲げる。部品に穴(あな)を開けたり、塗装(とそう)をしたりする人もいる。ほかにも、金箔(きんぱく)をはったり、糸から織(お)ったあざやかなひもを結びつけたりと、おおまかに11工程(こうてい)ある。そのほとんどが手作業だ。案内してくれた企画営業(きかくえいぎょう)本部長の平林正勝(ひらばやしまさかつ)さん(48)によると、「日本でこの仕事をこなせるのはこの人だけ」という職人さんも何人もいるそうだ。

 作り方は昔とあまり変わっていないが、鉄ではなくアルミを使って軽くしたり、かぶとの内側にやわらかい布(ぬの)を付けたりして、快適(かいてき)に身に付けられるようにしている。豪華(ごうか)で手間がかかる甲ちゅうは、安いものでも20万円近く。海外からの特注品では2千万円というものもあったという。

 2代目社長の田ノ上賢一(たのうえけんいち)さん(59)は「毎日作業をしていると、職人によってくせが出てしまう。それを伝統的(でんとうてき)な形に修正(しゅうせい)しながら後の時代に伝えていくことが難(むずか)しく、大事なことなんです」と話してくれた。  (福崎記者)

   ◆◇  ◇◆   

 こども記者は、工房のそばにある展示場(てんじじょう)で、完成した甲ちゅうも見学した。そこには織田信長(おだのぶなが)や徳川家康(とくがわいえやす)など、有名な武将(ぶしょう)の甲ちゅうがずらり。本物を参考にしたり、映画や大河ドラマで演(えん)じる役者さんのイメージに合わせたりしてデザインするという。

 「初めは身を守るだけだった甲ちゅうは、時代とともに武将のシンボルのようになった。個性的(こせいてき)な甲ちゅうに、味方は勇気づけられ、敵(てき)はこわがったそうです」と平林さん。

 好きなかぶとをかぶらせてもらった。熊本城(くまもとじょう)をきずいた加藤清正(かとうきよまさ)の、長い烏帽子(えぼし)形のかぶとを選んだ塩崎記者は「重くてぐらぐらした。清正さんはとても頭が大きくて首の筋肉(きんにく)が強かったのではないか」と想像(そうぞう)をふくらませた。

■もとはつりざおの会社

 丸武産業は1958年にできた。もともと、鹿児島(かごしま)の名産だった竹を使ってつりざおを作っていたそうだ。でも、もっとじょうぶでしなやかなカーボンなどのさおが出てきて、あまり売れなくなった。

 初代社長の田ノ上忍(たのうえしのぶ)会長(87)は甲ちゅうを集めるのがしゅ味で、修理(しゅうり)もしていた。人にゆずるととても喜ばれ、腕(うで)のいい職人さんもいたので、甲ちゅう作りを仕事にすることにした。

 そして1970年代に、テレビや映画用の甲ちゅうを作るようになった。それまでは、役者さんは古い本物のよろいを使うことが多かったようだが、動くには重すぎるし、昔の人は小がらなので、小さくて着られなかったりしたそうだ。

 軽く、役者さんの体格(たいかく)に合った甲ちゅうは評判(ひょうばん)になり、多くのドラマなどで仕事をまかされるようになった。黒澤明(くろさわあきら)かんとくの映画「乱(らん)」では、1600人分を作ったという。

 同社は、昔の甲ちゅうの修理や復元(ふくげん)も手がけていて、最近は伝統(でんとう)行事や結こん式のための甲ちゅうレンタルも行っている。結こん式で人気なのは「愛」の字がついた直江兼続(なおえかねつぐ)の甲ちゅうだ。でも「ラブ」という意味ではなくて、神様の名前から取った字で、守られているという意味だそうだ。 (垣内記者、塩崎記者)

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=2015/02/21付 西日本新聞朝刊=

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