紙面から

【ピカ☆いち】トンカラリン 熊本県和水町

2014年09月11日 19:50

懐中電灯の明かりをたよりにトンカラリンの中を進んだ
懐中電灯の明かりをたよりにトンカラリンの中を進んだ
 熊本(くまもと)県の北部、福岡(ふくおか)との県境(けんきょう)に位置する熊本県和水( なごみ )町(まち)。緑豊(ゆた)かな町は、日本最古の文章が記された大刀(たち)の出土で有名な江田船山古墳(えたふなやまこふん)などの歴史遺産(いさん)にめぐまれる。ここに、トンネル状(じょう)になった古くて不思議な建造物(けんぞうぶつ)があるという。その名は「トンカラリン」。地元のこども特派員(とくはいん)2人がトンネルに入り、なぞに迫(せま)った。

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■なぞのトンネル だれが何のために

 懐中(かいちゅう)電灯の明かりをたよりに、石で囲まれた真っ暗なトンネルを進んだ。夏の雨上がり。外はむっとする暑さだったが、トンカラリンの中はひやっとしていた。どこからか、ゆうれいでも出てきそうな感じでとてもドキドキする。

 ここには小学校の遠足で毎年来ていて、慣(な)れているとはいえ少しこわい。身長の3倍以上、高さ7メートルはある入り口も、奥(おく)に行けば行くほど、せまく暗くなる。

 手探(てさぐ)りで40メートル。最大の難所(なんしょ)にぶつかった。少し上がったところに70センチ四方の石組みの穴(あな)がある。明かりが照らした先はかべ。ほぼ直角に、左に曲がっている。最後までぬけられるだろうか。不安が大きくなる。

 意を決し、しゃがんで入った。大人なら、はいつくばらなければとても通れない。体の自由がきかないので一度入れば、もどることはできない。少し進む。わずかに上りになっている。息が切れる。ゴールまで20メートルほどのはずだが、とても長く感じる。外の明かりが見えてきた。穴をぬける。空気がおいしい。何とも言えない達成感があった。

 全長約450メートルのトンカラリンは、トンネルとみぞでできている。入ったのは地割(じわ)れ後など自然の地形を利用した「第1地隙(ちげき)」というトンネル部分だ。長年、調査している和水町教育委員会の益永浩仁(ますながこうじ)さん(46)の話では、いつ、だれが、何のためにつくったのか、今も分からないそうだ。

 和水町には、昔、米作りになやんでいた村の男が、神様のおつげを受けてトンネルをほると宝(たから)が出てきて米作りがさかんになったという話がある。その話を信じたい。(杉本特派員)

 トンネルは険(けわ)しく、天井(てんじょう)石がかぶせてある。ここから中世の鉄砲(てっぽう)の玉も見つかっている。最初は秘密(ひみつ)の通路で、その後、平和になってから排水路(はいすいろ)として使われたと思う。(下田特派員)

 益永さんは「トンカラリンはなぞだらけ。トンネルに入り、それぞれになぞときをしてほしい」と呼びかけている。

■名前は石が落ちる音から

 「トンカラリン」のよび名は、ぽっかりと地面に空いた穴(あな)に石を投げこむと、トンカラリンという音が聞こえたことから付いたとされている。地元の人たちは昔から「トンカラリンの穴」と言っていたそうだ。

 益永(ますなが)さんによると、今から40年前の1974年、熊本県がその存在(そんざい)を知り調査(ちょうさ)を始めた。よく年には作家の松本清張(まつもとせいちょう)さんが現地(げんち)に入り、邪馬台国(やまたいこく)の卑弥呼(ひみこ)との関係を主張(しゅちょう)し、ブームになった。その後、排水路(はいすいろ)に使っていたという説が注目されたが、トンネル内で灯火具(とうかぐ)やそれを置く穴が見つかったことなどから、排水路説は見直され、目的は不明のままだ。

 これまでに分かっていることは、全長445・1メートルで高低差が36メートル。全体は線形状(じょう)で、鶯原(うぐいすばる)神社(菅原(すがわら)神社)のすぐ下を起点に、東から西へしばらくまっすぐ下った後、北側に向きを変えて延(の)びている。

 自然の地割(じわ)れを利用し、底やかべを石組みにしたり、天井(てんじょう)部分に切り石をはめこんだりしている。中世のころの灯火具、鉛(なまり)の鉄砲玉(てっぽうだま)、大陸からの輸入陶磁器(ゆにゅうとうじき)が出土しており、少なくとも16世紀より前につくられたとみられている。

 地元の生まれで、子どものころにトンカラリンで遊んだという益永さん。「近くには江田船山古墳(えたふなやまこふん)などの古墳群(ぐん)がある。その関係もふくめて、これからも調査していく」と話した。

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=2014/08/30付 西日本新聞朝刊=

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