紙面から

【おしごと拝見】しん士服工場 イシダソーイング

2014年08月06日 14:39

ジャケット作りでは、お客さんの体に合った型紙と生地の調整が重要だ
ジャケット作りでは、お客さんの体に合った型紙と生地の調整が重要だ
■一針一針、気持ちこもった手ぬい  
 私(わたし)たちは、北九州(きたきゅうしゅう)市小倉北(こくらきた)区のイシダソーイングに取材に行った。この会社ではしん士服(男の人が着るスーツ)を作っている。

 き製品(せいひん)(できあがった服)を店で買う人も多いだろう。ここでは、注文を受けて作る「おあつらえ」の服を作っている。オーダーメードともいう。ミシンも使うが、大切なところは職人(しょくにん)さんたちが一針(ひとはり)一針、丁(てい)ねいに手でぬう。手ぬいだと糸の強弱がつけられるので、細かいところまで体にぴったり合う。

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 工場には、二十数人の職人さんたちがいて、50年も働くベテランの人も7人いるそうだ。工場長の山崎誠(やまざきまこと)さん(65)が、ジャケット(上着)ができるまでを教えてくれた。

 お客さんは、百貨店やテーラー(しん士服店)で体のサイズを測(はか)ってもらい、生地(きじ)やデザインを選ぶ。その通りの型紙と生地が、工場にとどく。工場では仮(かり)ぬいして店にわたす。お客さんの要望をもとに型紙を作り直し、生地も調整する。

 いよいよぬっていく。まずは「前身(まえみ)」(前の部分)を作る。しん士服にはたくさんのポケットがある。ポケットを作り、型くずれしないよう前身の表地に毛で作った「しん」を張(は)る。山崎さんは「接着剤(せっちゃくざい)が付いたしんだと生地をこわしてしまうので一針ずつぬっていく」という。表地とうら地(身返(みかえ)し)を合わせると前身のできあがり。背中(せなか)の部分を合わせてわきをぬう。後は「表」のようにぬっていく。

 ジャケットにズボンも合わせたスーツは、できあがるまでに1カ月くらいかかる。1着20万~30万円もするが、体にぴったり合って着心地(きごこち)がいいそうだ。工場では1日に6着ほどしかできないという。社長の石田原隆(いしだはらたかし)さん(65)は「それだけ丁ねいに作っているので、お客さんも満足してくれる」と話していた。 (山口記者、山下記者)

■ベテラン職人のこだわり

 ベテランの職人(しょくにん)さんたちは、昔は師匠(ししょう)に教わり作っていた。一通りできるようになるまで4~5年はかかったそうだ。

 私(わたし)たちは、60年以上仕事をしている生野淳司(いくのじゅんじ)さん(76)に話を聞いた。「自分はずっとここで服を作っているけど、できあがった服はお客さんが着て世界中を飛び回る。とても夢(ゆめ)が広がる」とうれしそうだった。有名な人が着てテレビに出ているのを見ると、気分が良いそうだ。

 一番のこだわりは「かた」の部分。平面の生地(きじ)を立体にするので、体に合わせて丸みを出すのが難(むずか)しい。「糸のしめ具合で強弱をつける」「うかす感じでぬう」と、着る人のかたがこらないように、思いをこめて作っている。

 別の職人さんは、一針(ひとはり)一針、ボタンの穴(あな)かがりをしていた。機械だと1着10分で終わる作業が、手ぬいだと2時間はかかる。右手の親指には大きなたこができていて、さわらせてもらったら、やわらかくなっていた。

 この十数年は若(わか)い人にもおあつらえの服が人気で、若い職人さんも増(ふ)えてきたそうだ。職人さんたちを見ていると、一着のスーツがとても立派(りっぱ)ですごい物に見えてきた。作っている途中(とちゅう)のジャケットにうでを通してみると、とても着心地(きごこち)がよく、うでを抜(ぬ)きたくなくなるほどだった。 (菊池記者、堀江記者)

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=2014/07/05付 西日本新聞朝刊=

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