紙面から

【ピカ☆いち】ふるさとの自然に学ぶ 津野小

2014年04月07日 19:06

 ワカサギつりの後は自分たちが育てた野菜でピザ作り-。福岡(ふくおか)県添田町(そえだまち)の津野(つの)小学校。ここの子どもたちは毎日がキャンプ気分だ。豊(ゆた)かな自然と生き物、そして子どもを見守る大人たち。ふるさとの素材(そざい)を存分(ぞんぶん)に活用し、生きる力をはぐくむ山の学校を訪(たず)ねた。

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 「つれた、つれたよ」。身長の2倍はあるつりざおをかかげ、子どもたちの笑顔がはじける。さおの先には小さなワカサギ。手に取って、ながめるうちに魚は動かなくなった。「人にふれたから死んじゃったのかなぁ」。みんなは少し考えるようなしぐさを見せた。

 津野小から歩いて5分の油木(あぶらぎ)ダム。この日は生活科の授業(じゅぎょう)で1、2年の6人が参加した。つりの先生は、経験(けいけん)豊かな6年の3人と、地いきのお父さんたちだ。

 10匹ほどつり、学校にもどると、冷とう分も合わせて辻真作(つじしんさく)校長(57)が天ぷらにする。そばで手伝いながらつまみ食いする子どもたちが、ほおをゆるめた。

 休む間もなく次はピザ作り。学校の一角には約2年前に地いきの人たちがつくった石窯(いしがま)がある。校内では1年を通してトマトやピーマン、シイタケなどを栽培しており、季節によって収(しゅう)かくしたものを具材にした石窯ピザは、今や津野小の名物になっている。「いろんな人に支(ささ)えられながら、作物を育て、命をいただく。子どもたちは生きることを体で学んでいる」と辻校長は話す。

 体験メニューは米作りや茶つみ、アユ焼きとはば広い。シイタケ栽培をする林業体験は、シイタケ菌(きん)を打つ木の伐採(ばっさい)に始まり、植樹(しょくじゅ)でしめくくる。先生は、やはり地いきの住民だ。

 子どもたちは年中、遊んでいるように見えるが、ほとんどが教科のカリキュラムに重ねている。理科や生活、家庭科以外にも、畑の広さで面積(算数)を知り、シイタケ栽培から国土(社会)を学ぶ。住民へのお礼の手紙で漢字や表現力(ひょうげんりょく)(国語)も身につける。

 その集大成でもある、この日のピザの具はシイタケ、ブロッコリーとあげたワカサギ。熱々のピザをほおばった2年の木森翔也(きもりしょうや)君(8)は「つりは楽しいし、いろんなものをピザにのせて焼くことができる石窯はぼくたちの自まん」と楽しそうに語っていた。

減り続ける子どもの数 体力低下もなやみのたね

 津野小は児童数16人の小規模校(しょうきぼこう)。1、2年と3、4年の各2学年が、いっしょの教室で学ぶ複式(ふくしき)学級となっている。授業(じゅぎょう)を受け持つ先生は5人いて、子ども3人に先生1人というきめ細かい指導(しどう)をしている。

 ただ、最近のなやみは子どもの体力低下という。校区が広く、ほとんどは車か、バス通学。それぞれの家も遠く、休日は1人でゲームなどをしてすごす子が多い。このため、学校では校内に人工の遊び場をつくったり、週2回の歩き通学をすすめたりして体力の向上につとめている。

 子どもの確保(かくほ)も大きな問題で、現在(げんざい)、休止中の都市部の子どもを受け入れる「山村留学(りゅうがく)」に代わって、近くの学校から転入できる制度(せいど)を新たに始めた。春には添田(そえだ)小学校の2人が仲間入りすることになっている。

 津野小の卒業生で、学校の警備員(けいびいん)をしている松本敏輝(まつもととしてる)さん(54)は「子どもは減(へ)っても、地いきにとっては宝(たから)。学校はよりどころになっている」と話す。

 間もなく卒業する6年の野村純一郎(のむらじゅんいちろう)君(12)は「将来(しょうらい)は料理人になって、津野の山菜を使った料理を地元の人に食べてもらいたい」と夢(ゆめ)を語った。

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=2014/3/15付 西日本新聞朝刊=

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